沼田まほかる『猫鳴り』
- 作者: 沼田 まほかる,ヌマタ マホカル
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2010/09/16
- メディア: 文庫
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宿した命を喪った夫婦。思春期の闇にとらわれた少年。愛猫の最期を見守る老人。それぞれのままならぬ人生の途に「奇跡」は訪れた。濃密な文体で、人間の心の襞に分け入ってゆく傑作長編。一匹の猫の圧倒的な存在が物語を貫く。
(以下の文章は2008年に単行本の感想として書いたものです)
ここにあるのは「奇跡」などではないと思う。人がただこうして日々生きていること自体が奇跡だというのならばそうかもしれないが。
猫と出会い、猫と暮らし、やがて猫と別れる人間というもの。
そして猫というもの。
それをこんなにも淡々と厳しく描いた小説はあまりほかにないような気がする。それでいて、読後感は不思議と暖かい。
私の場合、夜寝る前にベッドの中で3部構成になっているこの本の第1部を読了したところであまりにも心を揺さぶられたため、ああこれはいったん中断しようと思った(一気に読んでしまおうというのではなくて)。
第1部の主人公はようやく身ごもった子どもを流産した40歳の主婦で、彼女が執拗に繰り返すこと、そのときの猫の有り様の描写が凄まじい。猫好きの中にはこの部分を読んで嫌悪感を抱く人もいるかもしれないが(猫が殺されたり傷つけられたりするわけではありません!)、でもご承知の通り私は猫を溺愛する人間だけど、そのときの彼女の気持ちがすごくよく理解できたからそうは思わなかった。
そして死にゆく猫の様子が克明に綴られた第3部を読んでいるあいだ、私は何度となく隣で眠るぐりを眺めたり、その柔らかい体に触れたりしていた。
いつもそうだが、震動が藤治の身体に沁み込んでくると、なんだか自分と猫が目に見えない河の流れのようなものに一緒に身を浸しているような心地になっていった。
猫だの人間だのの境界がぼやけて、藤治はモンを納得し、モンは藤治を納得して、丸ごと曖昧に溶け合って安心している。
おかしなものだ、と藤治はひとりごちる。言葉のやりとりができる相手とは、こうはならない。言葉が先に立ってしまうと、そのかわりに何か大切なものが壊れるのだろうか。
私自身、言葉というものをとても大切に思っているし、言葉を使うことを職業にもしているわけだけど、確かに言葉を持たない者と深くつきあうようになると、人間は言葉と一緒に天国と地獄の両方を与えられたんだなとつくづく思ったりもする。
それにしても、“猫鳴り”の描写のすばらしいこと!
ARABAKI ROCK FEST2011・2日目の大トリ、GTGGTR祭@陸奥
とにかく最初に言っちゃうと、このセッションはめちゃめちゃ楽しかった!!!
もうこのメンバー&コンセプトで全国ツアーまわってほしいぐらい(笑)もちろん、こういう野外フェスの一期一会な感じがよいんだろうけどね。やってるほうもすごく楽しそうだったし、やはり彼らと年代も近くて邦楽ロックよりも洋楽ロックで育ってきた私にはたまらない企画でした。
帰りのバスが気になるため、かなり後方で見ていたので細かい部分は見えていないし、レポではなくてあくまでも私的な感想です。セトリは一応合ってると思うけど。
GTGGTR祭BAND
Vo&Gt 佐藤タイジ(THEATRE BROOK)
Vo&Gt 田中和将(GRAPEVINE)
Gt 西川弘剛(GRAPEVINE)
Gt 長田進
Ba 中條卓(THEATRE BROOK)
Ba 金戸覚(GRAPEVINE)
Dr 亀井亨(GRAPEVINE)
Dr 沼澤尚(THEATRE BROOK)
Key エマーソン北村(THEATRE BROOK)
Key 高野勲(GRAPEVINE)
Cho うつみようこ
Cho 真城めぐみ
Cho Leyona
<SESSION GUEST>
うじきつよし
奥田民生
KUMI&NAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)
斉藤和義
須藤寿(髭)
山本恭司(BOWWOW)
吉井和哉
and more・・
アラバキ2日目の備忘録その1
そもそもあまり早い時間には家を出られなかったので、仙台に着いたのがお昼過ぎぐらい。仙台駅からシャトルバスで会場入りするつもりで前売り券も買ってあったんだけど、新幹線の中でTwitterでアラバキ情報を追っかけていたところ、バスに乗るのに1〜2時間待ちといった話ばかり。まあ、みんな早く会場入りしようとしていたからこそだろうと思い、自分が着く頃には混雑も緩和されているはずと思いながらも若干不安に。しかし、駅近のホテルにとりあえず荷物を預けてバス乗り場に行ってみると(12時45分ぐらいかな)、案の定、乗車待ちの列はなく、一人の私はすんなりと待ち時間ゼロで乗車。13時30ぐらいには会場に着きました。
会場までの道のりがね、ほんと山の中に入っていく感じで、テンション上がりました(山とか川が好きな人)。そして途中で秋保温泉の案内が出て、大昔に来たなあと感傷にふけりつつ。こんなに近いなら、次回はみんなで秋保に宿とったらどうかと思いつつ。
大型の夏フェスは、ひたちなかとサマソニぐらいしか行ったことないのですが、どちらも入ってすぐのところから人がわんさかいるのに、アラバキはゲートを入ったら、どっちに行ったらいいのかわからないぐらい閑散としていて、実際ちょっと迷って焦りました(笑)
目指すメインステージ「陸奥」が入り口から一番遠いため、そこまで順番にステージをひやかしつつ行こうと思っていたので、「磐越」の髭、「花笠」のNATSUMEN、「鰰」のNothing's Carved in Stone、「津軽」のチャボさんのまほろばセッションをそれぞれ1〜2曲ずつ見ながら進むことに。NATSUMENって知らなかったけど、けっこう好きなタイプ。Nothing'sは、年末お世話になる(笑)生方さんを見に。かっこよかった。あの人は小柄だけどすごく雰囲気のあるギタリストよね。JAPAN JAMのときもそう思いました。12月が楽しみです。そしてチャボさんが村上ポンタさん、吉田建さんとやっていた津軽のステージは、もうなんだ、クラブクアトロみたいに狭くてコージーな空間で(クアトロの柱と壁の代わりに緑があるわけだ)、私は後ろでまったり見ていたけど、有り難すぎる!と思いました。
16時過ぎからは、基本的に陸奥ステージ近辺をうろうろと。吉井和哉のレポもどきはこちら2011-08-29 - SATIN CHIC(リンクの仕方を忘れた〜)。吉井さんが終わったところで、ビールを飲みながらセトリやら簡単な感想やらをツイートして(そうそう、その前に人がいる前で転びました)、その後すでに始まっていたエレカシは後半4曲ぐらい、後方から見たんだけど、いやほんと素晴らしいステージでした。私はエレカシは去年のJAPAN JAMと今年のひたちなかで見ただけなのですが、間違いなくその3回のなかでは断トツに鬼気迫るパフォーマンスだったと思う。後方の観客もみんな熱いリアクションで応えてました。
んで、このあとオールドロックファン狂喜乱舞のギター祭りがあったんですが、それは次回に(ぜーはー)。なんで急に一生懸命ブログ書こうとしてるんだ、私。
そうそう、あとフェスといえば飲み食いも楽しみの一つですが、Twitterを見ていたら、やたら「イチゴ削り」がうまいうまいというツイートが目立っていて、実際、店の前は長蛇の列だった。しかし、甘いものには1mmも惹かれない飲んべえですみませんという感じで、ワタシ的にはイワナの塩焼きとビールが最高だったーー。噂の川崎町ブースのおそばも食べてみたかったけど、私が行ったときには売り切れていた。はー。やっぱりレポは無理。つづく。
荒吐の吉井和哉、そして2011年夏フェスの覚え書き
2年半?いや公開していた時からは3年ぶりにブログを開いた(爆)
こっちはあまり記事数もない短期営業のほうですが、この前の若干長くやっていたブログのほうがもちろん充実しているし思い出深いけど、本名でやっているTwitterからリンクするのはちょっとためらわれるので。
そもそもブログとか始めたのも吉井さんのせいだし、今回も昨日行ったアラバキでのステージがとても素晴らしく何か書きたくなったので、Twitterじゃ無理だし(吉井ファン以外のフォロワーさんのほうが多いんだから迷惑だしw)、じゃあ久しぶりに掘り起こすかってことで。今後もこういうことがあったら書くかもしれないけど、ぐらいのユルい感じでとりあえず。前置きでした。だらだらと長い文章になりそうですがすみません。
アラバキ初参戦でした。しかも、2日目の午後からという短時間でしたが、とても楽しかった。
吉井和哉以外のアクトについては後述するとして。
今年は、8月7日のRock in Japan@ひたちなか、20日のJ-Wave Live、そして今回のアラバキと、吉井さんが予定している今夏のフェスシリーズ4本中3本に参戦。その自分で体感した3本の比較でいうと、とにかくアラバキはなんだろう、いい意味でゆるくて優しい、やってる本人が楽しくてしょうがない(ゆえに可愛さ120%増し)な感じでした。でも、(少なくとも個人的には)いちばん伝わってきたという。
まず、登場からして、格好こそ黒のインナー&スキニーに赤のシャツ?ジャケット?(国際フォーラム2日目=DVD化されるやつと同じ)というキメキメ格好いいバージョンの人だったんだけど、なんかニコニコしながらゆっくり歩いてきて(すでにステージに出ていたバンドが少し音を鳴らしているなか登場)、サングラスで武装もしてないし、先のツアーやその前2本ではおなじみの、「THE APPLES」からギターを抱えての「ACID WOMAN」の流れではなく(すごくかっこいいけど、フェス向けかどうかは微妙だと思うの)、ギターを持たずに「LOVE & PEACE」を歌うというピースフルな幕開け。これはよかったですね。
その後は「VS」からイントロ別アレンジの「MUSIC」というフェスバージョンの流れ(ひたちなかで初めてこの別バージョン「MUSIC」イントロ聞いたとき、あれ何これ知らない知らない、もしや「OK」ですかと思いました。ていうかこのイントロが違うバージョンってワンマン行ってるファンはみんな最初キョドるよね)。
そして「ONE DAY」。この曲は私はぐっとくるときと醒めちゃうときがあって、相対的にはコアなファンのあいだでは評価の低い(というか"らしくない"と思われる)曲なんだろうけど、この曲が収録されたアルバム『VOLT』を初聴きしたときは、全曲のなかで唯一涙したのが「降りた電車に誰が乗ってたかなんて/気にすんな もう彼らは遠くへ行った」のフレーズだった。これはね、やはりある程度年齢を重ねないと言えないし、わからない感覚かもしれないと思うんだけど。
まあでもそんなにやっぱり特に好きな曲ではないんだけど、この日は「地球の蒼さ思い出せ」を「仙台のきれいな緑思い出せ」(ちょっと字余り)と歌っていて、それに胸を衝かれてふわっと涙が出ました。なんか周囲からも悲鳴のような歓声が上がっていたと思うよ。
「ONE DAY」が終わって、高揚した様子の吉井和哉が「仙台に捧げます!」「東北に捧げます!」ってたぶん2〜3回ずつ言ったと思うんだけど、それでああ「BURN」だなって思った。思ったけど、やっぱりイントロがきて、あの人がクネクネ動きだしたらほんと泣けてきた。私は残念ながらバンド時代を生では見ていないわけですが、「BURN」は39ツアーの仙台公演で2列目センターで見るという幸運に恵まれていて。あのときの吉井和哉の美しさは、いまだにベスト1かもしれないんだけど、今回はそれに比べるとクネクネは若干封印されていたかと思います(笑)間奏のところの、あの腕の動きとか39仙台ではやっていたけど、今回はそんなでもなかったような。
昨日は最前ブロックではないけど、その後ろあたりで見ていたので、すごく近くもなく遠くもなく。「BURN」で後ろのほうがどういう反応だったのかはわからないけど。でも私はなんか感動すると空(室内の場合は天井w)を見上げてしまう癖があるんだけど、このときだったかな、鳥がすいーっと飛んでいって、それがまた泣けたりもしました(箸が転んでも泣ける年頃)。
あとは「ビルマニア」と「FLOWER」で計7曲。すっごく早く感じたな〜。「ビルマニア」は、今回は客にマイク向けたりはしませんでした。アウェイのJ-Waveよりこっちでやればよかったのに。でも「FLOWER」単独では、ひたちなかがベストだった。
で、MC入ったのがどこかは覚えてないけど、すでにさんざんレポ(ツイート)されてるけど、「前回アラバキに出させてもらったのは2年前で・・・」で即座に「えーーーー!!!」のブーイングが(笑)。去年行ってない私でさえ“去年”だと思ってるのに、あの「1フェスにつき1ボケ」みたいなスタンスはなんなんですかね。「かわいい」言われるのわかっててやってるんですかね。2006年のCountdown Japanの、カウントダウンしたあとに「来年」「来年」連呼して突っ込まれて「ふぁぇ?」みたいな素のリアクションしてたときを思い出しました。でも、まわりに確認したあげくこちらに背を向けて水を飲んでから、しれっと「サンキューどうもありがとう。前回アラバキに出させてもらったのは去年で・・・」と仕切り直したのは大ウケで、さすがのコメディセンスでした。
なんだろうな、たとえばフェスでいえば2006年のひたちなかや、2010年のJAPAN JAMのような圧倒的な、伝説と呼ぶにふさわしいパフォーマンスではなかったんだけど、本当に「慈愛」という言葉がぴったりくるようなアラバキのステージでした。それは「Flowers & Powerlight」ツアーでもひたちなかでも感じられた要素だけど、あのアラバキ(東北)の空間と震災というバックドロップを得てさらに純度を増したように感じた。エロいこともしてるんだけどね。慈愛なんて言葉、ロックミュージシャンにとって褒め言葉なのかって話だけど、でもあの人の場合、それが嘘くさくならないだけの猥雑さも同様に抱えているから好きなんだ。
何より、本当に楽しそうだったよ。柔らかい、きれいな顔をしていた。こっちまで幸せになるような。
「来年また会いましょう!」って言っていたので、来年また呼んでもらえるなら(笑)私もぜひ行きたいと思う。
この世でいちばん大事な「カネ」の話
あとがきから。
下町の町工場のオヤジさんも、威勢よく声をはりあげている八百屋のオバちゃんも、ちっとやそっとのことじゃあ、お店は閉めない。
生きていくなら、お金を稼ぎましょう。
どんなときでも、毎日、毎日、「自分のお店」を開けましょう。
どんなに煮詰まってつらいときでも、働いていれば、そのうちどうにか、出口は見えるもの。
働くことが希望になる。
働くことは、生きること。
流れるままに 最後は絶対そうしよう
誰も怨まず最後は絶対そうしよう
愛する世界に飛び込みいい幻想見よう