RAINBOW MAN

吉井和哉サマーソニック2012 8月18日(土)幕張マリンステージ

ずぶ濡れになってスタジアムの外に出て、最高のライブのあとの最高においしいビールを飲みながら、とりあえず私がツイッターに送った第一声は「吉井さん、やってくれましたよ!」だった。そうして一緒にいた友だちと「よかった、よかった」「どんだけ持ってる男なの」などと言い合った。

今年はたまたま洋楽系フェスのフジロック(初めて)とサマソニ(2回目)に両方行くことになったわけだけど、サマソニ参加は吉井さんの出演が発表された段階で決めていた。決めていたけど、行かないという選択肢はなかったけど、その頃からずっとどこか心配だったし(笑)、たぶんずっと頭の片隅に「サマソニどうなるサマソニどうなる」っていうのがあったと思う。

もちろん、第1回フジロックの頃は特にファンでもなかったわけだから、当時の状況についてはあとから雑誌やネット上に残っているファンの人が書いた文章から推測するしかなかった(そういやフジロックにたぶん全回行っている昔の会社の同期で音楽業界の人と最近たまたまその話になって、「イエモンのせいで大変だった」みたいなことを言われてムカっときたけど、一応流したということもあった…)。でも、その後自伝ではっきりフジロックでの挫折が解散のきっかけとなった、ということを本人が言っているわけで。やっぱりフェスのトラウマみたいなものがね、それも邦楽フェスについてはすでに払拭できただろうけど、フジロック以来15年ぶりの洋楽フェスへの出演ともなれば、またぞろ疼き出してもおかしくはないだろうと思っていたわけです。もちろん、吉井さん自身そういうことをふまえたうえで挑戦してきたのだということはわかりつつも。

だからほんと、その当時から今まで見守ってきたファンの人たちには到底及ばないけど、この7年ずっと見てきた身としてはほんと「やってくれた!」という気持ちでした。とにかく「感動した」「凄いステージだった」(感動したし良いステージだったけど)よりも、まずは「おめでとう!」みたいな(笑)しかし、ずっと雨の呪縛というのはあっただろうし(だから必ずお天気のこと言うもんね。。)、今回も豪雨に見舞われたけど、結果的にはそれをプラスに、虹に変えてみせた。そういう一種神憑ったところはやはりある人だよねえ。でも単純に豪雨のなかでの「LOVE LOVE SHOW」は楽しすぎたし、気持ちよすぎた!大好きな人の生歌を聞きながら、何も考えずに思う存分雨に打たれることがあんなに楽しいとは思わなかった(笑)まさに狂乱状態だったけど、きっとステージから見たらみんなすごい笑顔だったと思う。うん、ほんと一生忘れない。

今回、フランツ・フェルディナンドとグリーンデイの前ということで、その2組待ちのお客さんもけっこう多かったと思うんです。でも、終わってからいろいろ検索していたら、その2組やほかのバンドがお目当てだったけど、「吉井和哉がベストアクトだった」「期待していなかったけど吉井和哉がすごくよかった」「ハマった」という意見をたくさん見ることができて嬉しかったな。

それでファン/非ファンを問わず、この日のクライマックスはやはり豪雨の「LOVE LOVE SHOW」であり最後の「JAM」であったことは確かだと思うけど、実は「CALL ME」も特に非ファン層に対してすごい力をもってるとつねづね私は思っているのですよ!(何者)。あれ、盛り上がる曲じゃないし合唱するところもないから端から見てると静かな感じなんだけど、今回だってイントロ鳴った瞬間の歓声は「JAM」に近いものがあったよ。メロも歌詞もいいし、何より吉井さんの声の良さがものすごくダイレクトに伝わる曲で、みんな聞き惚れているのがよくわかる。「CALL ME」や「JAM」のときの歌声ってほんとワールドクラスだと思いましたわよ。「CALL ME」が頭から離れないという声もけっこう目にするし、実際あの曲は英語でいうところのhauntingな楽曲。私はあれこそフェスでは必ずやるべき曲だと思ってる。

あと、なんだ結局イエローモンキーの曲かよみたいな声もあるけど、それはもちろんファンとしてもあまり知られていないソロの曲のときは周囲の反応が気になったりするし、確かにソロでもこれという大ヒット曲があったらいいなとは思う。だけどアーティスト自身がバンド時代の曲はやらないと決めているならともかく、もうこうして封印を解いたなら、どんどんそれを利用して客を取りにいったらいいのだ。その合間に歌われる「母いすゞ」は、わかる人には絶対わかるすごい曲だから。ただ、そういう意味で個人的には1曲は自分もギターを弾いて、「ノーパン」あたりをガツンとやってほしかったなあとは思っているのだけど。

フジロックのジャック・ホワイトだって、ソロ名義のファーストアルバムを出したばかりでそのツアー中であるにもかかわらず、やっぱりそれはホワイト・ストライプスの楽曲のほうが絶対的に盛り上がるんですよ。締めは「Seven Nation Army」だし。だからってソロがつまらないわけじゃない。楽曲の持つ歴史とか背景の違いというのもあるだろう。一方でそれを複雑に思うファンがいるのもわかるし、それはそれでその人の気持ちの問題だから、他人がとやかく言うことじゃない。


ということで、来年はついにフジロックかな?(笑)


そして、吉井さんが「一生の宝物」と呼んだ、マリンステージから見たオーディエンスと虹(photo by Tre Cool of Green Day)。奇跡のような1枚。
Tre' Cool on Instagram: “Rainbow”



追記
一応セットリストと個々の感想を。
吉井さんの前のアクト、ロスト・プロフェッツの途中でアリーナに向かったんだけど、その頃からちょっとぽつぽつと小雨が降るような感じに。当日は午前中すごい雷雨だったそうですが、私たちが会場に到着した正午以降はずっと晴れていたので、あれあれあれという感じではありました。しかし、ちょうど吉井さんの出番直前でいったん雨が上がり、喜んだのもつかのま、それはその後起こることの序章でしかなかったという・・・

衣装はエンジ色っぽいロングコートと白シャツ&黒パンツ。コートはJOIN ALIVEとか雑誌の撮影で着ていたものと同じですかね?たぶん「SPARK」終わったところで脱ぎ捨てたので、あとはずっと白シャツ(はだけ気味)、しかも最終的には雨と汗で濡れていい感じでした(笑)

1.「SPARK」
のっけからハナモゲ(爆笑)。ていうか、こっちもすごい緊張してて、1曲目なに、なんなのよ、おおSPARKキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!とかなってるところで、たぶん少なくとも「唇を噛み合って 目眩がするほど抱き合って 確かめたい」はまったく歌えてなかった。もう、まさに「ちょwww」ってやつですよ(笑)おかげでこっちの緊張は解けたけど。何となくまだ声も動きも固いかなあという気はしましたが、やっぱり後からいろんな人の感想を見ると、その場を離れようと思ったけど「SPARK」が聞こえてきたから走って戻ったとか、走ってマリンに向かったとか、つかみはオッケーってやつですね。個人的には、私はその時行ってなかったですが、振り袖はおって出てきたロッキンの「楽園」始まりのほうがいいなあとは思ってました。

このへんはまだ雨は降ってなかったと思うけど、何となく不穏な雲がじわじわとこちらに近づいてきて・・・

2.「マサユメ」
3.「煩悩コントロール

あのねえ、私はこの2曲とも大好きだし、かっこいい曲だと思ってるけど、個人的にはここでどっちか1曲はちょっとコアな感じな曲でぶちかましてほしかったです。特に吉井さんがギター持つ曲ね。「ノーパン」「シュレッダー」「クランベリー」そのあたり。ゴーフェスを「ノーパン」で始め、J-Waveライブを「恋の花」オリジナルバージョンで締めたチャレンジャーなんだし。ごく個人的な希望ですが。だってたぶん、洋楽ファンでよく知らない人は吉井さんがギター弾けると思ってないよ、きっと・・・(笑)

4.「母いすゞ
イントロの段階ですでにまた雨が降り始めていて、「雨 やめ」「やめ 雨」とかアドリブで歌ってけっこう笑いをとっていました。そしてその後「一雨来るかも 雷鳴るかも」「変な空模様だ」「変な風向きだ」「今夜は荒れそうだ」と歌っているときは確実に強めに降ったりやんだりの変な天気になっていて、とにかくその符合にすげー、なんなのこれ、と思ったよね。首つりのジェスチャーはやってなかったような?(間違ってたらごめん)まあ、でも確かに海外バンドや洋楽ファンが集まっている場所で「煮物の芋」とか「さんまが焦げるわ」とかかなりシュールでした(笑)Way to go! Yoshii-san!

5.「CALL ME」
すばらしかった。声がすごくよく出ていて、本当にどこまでも響き渡るような感じ。恍惚感に包まれました。本文のところでも書いたけど、この曲は特に野外フェスでね、そういう感情に襲われることが多い。古くは2006年、沖縄のフェスのときもそう。ああ、いい声だなあ、会場のどこにいてもこの声は届くだろう、そう思わせる。最後の「恋に罪に欲に胸に花に水に風に雲に空に星に 永遠に 永遠に 永遠に CALL ME」のところの表現力とか。すごい歓声だったよ。そういえばこの曲のときは雨が上がって西日がさしていて、うわあ顔が熱い、今度は太陽を呼んじゃったよって感じでした。

6.「ALL BY LOVE」
これも大大大好きな曲なんだけど、この日はあまり印象に残っていない。たぶんこのあたりからまた雨が強くなってきたのかな?去年の年末の武道館がすばらしすぎたというのもあります。

7.「LOVE LOVE SHOW」
「虹が出たぜー!」天空を指差す吉井。振り返ると、大きく弧を描いたきれいな虹が! みんなで「きゃー!!!」「すごい!!」「あいつ持ってる!!」と騒ぎまくる(笑)すかさず「ラーブラーブショー!!!」のシャウトが! こっから先は正直ちゃんと覚えていないぐらいの興奮状態。WOWOWの映像にも残っていたけど、「雨が続いて雷鳴って」のところ、ほんと雷こそなかったけど土砂降りで、一緒に天を仰いでいたと思う。ほんとミラクル。私は一応カッパを持ってたんだけど、ここはもう濡れてなんぼって感じで、もっと雨もってこーい!ぐらいの勢いではしゃぎまくった(笑)ああ幸せだったなあ。そういえば映像のなかで、ステージ前方にきたけど雨の勢いにひるんだ吉井ちゃんが可愛かったね(笑)

8.「ビルマニア」
マイクを落としました。落としました。落としました。マイクスタンド持ってみんなに歌わせるところね。いや、けっこう盛り上がっていたんだけど、私はちょうどその瞬間を肉眼で見ていたのと、「ごとっ」「ごとん」っていう音が笑いのツボに入ってしまいました。以上。

9.「点描のしくみ」
これ入れるの忘れてたw 音源がまだないから自分のサマソニプレイリストに入ってなかった。いまラジオで初めて音源ちゃんと聴いたので補足。かっこいいし良い曲だよね〜。イントロからたまらん。踊れる曲だし。ヒットしますように。ライブでは途中吉井ちゃんのクネクネ踊りも炸裂していたのでツアーが楽しみです!

10.「JAM」
MCは、フェスはいつもそうだけど謙虚な感じで、「自分もいつも聞いている海外アーティストと一緒のステージに立たせてもらって感謝しています」「ありがとう」って何度も何度も言ってた。そんな言わなくても!と思うこともしばしばですが(笑)最後は、「僕の、僕らのいちばん有名だと思う曲を、愛と平和の曲を」と言って「JAM」。うん、まあでもやっぱりこの曲のときの反応はすごかった。大合唱だった。すごいね。だってあの場に多かった20代の子たちなんて、まだ小学生になるかならないかの頃の曲でしょう。

ツイッターでも書いたんだけど、イエローモンキーも吉井和哉も知らない、グリーンデイ待ちでしかたなくその場にいた「誰あのおっさんww」みたいな若い男の子が、この曲の歌詞が良すぎて泣いてしまったって。

これもフェスに行くとよく思うことなのですが、日本人のアーティストでもあまり意味のない英詞で歌っていたり、日本語だとしてもまったく何を言っているのか聞き取れなかったりするとき、やはりこの人の歌と言葉と声の力というものを痛感します。「JAM」や「CALL ME」が頭から離れない、という人が多いのは、ほんとそういうことだと思う。

フジロックでは、井上陽水さんがジャック・ホワイト〜エルビス・コステロレディオヘッド前のメインステージに出ていて。まあ、陽水さんはもともとお目当ての人多かったと思うんですよ。少なくとも今回のサマソニの吉井さんよりはアウェイじゃなかったはず(笑)もちろん、知名度もキャリアも全然違うし。でもねえ、ほんとこの陽水さんのステージのとき、私も通路みたいなところで聞いていたんだけど、とりあえず移動しながらチラ見しながら行こうって人たちがたとえば「少年時代」とか「夢の中へ」「傘がない」とか次々繰り出されるもんだから、みんなその場に立ち止まって聞き入っちゃってすごい渋滞になっちゃったの。ロキノンで「これがアーティストパワーだ!」とか書いていたけど、それは素敵な光景だったな。今回の「JAM」にはやはりそれと同じパワーを感じました。

吉井さんも最後泣きそうになってたけど、歌い終わってほんと満足そうな嬉しそうな顔してたね。


サマソニ大成功、おめでとう。